オフグリッド出版【はじめに】的な 出版#1

オフグリッドという言葉に出会ったのは311の震災後間も無くのことだったのだけど、それはもうものすごい衝撃を受けた。

311の原発事故の後、自分が使う電気についてこれまであまりにも無関心で無責任だったことを身に染みて感じた。あとの世界をもっとよくするために、どうにか地球をこれ以上汚すことなく自分の電力を賄えないだろうか、そう模索していた時期に「オフグリッド」という概念と出会った。グリッドというのは電線網のことで、オフグリッドとは電線網から切り離された状態。つまり電力を自給する、あるいは電気を全く使わないライフスタイルのことである。

また、最近ではオフグリッドの概念は電線網に限らない。電気のほかガスや上下水道なども「グリッド」化されて各家庭に供給されている。もっと大きく捉えれば交通網も「グリッド」であって、Amazonや楽天などの通販で購買することや交通網を使って移動することも「グリッド」の内側の行為なのかもしれない。

そういう「グリッド化」で社会は効率化されたわけだけど、あまりに便利なのでその弊害から目を背けたくなる。全てではないけれど多くの場合これらの「グリッド」は遠くから運ばれた燃料を燃やし続けることで成り立っている。グリッド化の恩恵を受けている限り、僕のライフスタイルは環境破壊と切っても切り離せない。「原発反対!」と口では言いつつ、グリッドの内側でぬくぬくと暮らしているこの現状をどうにか脱することはできないだろうかと模索していた。

そんなことを考えながら東日本大震災後1年間、仙台を拠点にボランティア活動をしていたのだけど、現地での住居やその他全てをお世話をしてくださったユウヤさんという方が別れ際に一冊の本をくれた。「コレ、お前に渡すと真似しそうで怖いから迷ったんだけど…」

そうして僕の手に渡ったのはその後の人生のバイブルとなる「僕はお金を使わずに生きることにした」という本だった。

ぼくはお金を使わずに生きることにした

ぼくはお金を使わずに生きることにした

マーク ボイル
1,870円(04/12 20:47時点)
発売日: 2011/11/26
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「そうか、経済活動そのものがグリッド内部の行為であって、お金を使わないということが究極の答えなんだ!」と僕はこの本を貪るように読み、これまで5回以上は読んだ。特にこの本では僕の大好きなガンジーの言葉「Be the change that you want to see in the world. 見たいと思う変化にあなた自身がなりなさい」を多用していてそれもグッときた理由の一つだった。理想像がこのときはっきり定まった。

さて、時は流れて僕は結婚して父親になった。震災後抱いてきたイメージを実現するべく和歌山の山奥へと移住した。新生児とともに「オフグリッド」を目指す、何のスキルも知識も(貯金も)持たない僕。今考えると本当に恐ろしい。

理想に燃える僕は新生児のお世話で毎日寝不足で消耗していく妻に対してストイックエコを強要し、紙おむつすらも買わなかった。火の扱いも知らないのに調理は全て薪。冷蔵庫はない。買い物もほとんど行かない。家は直すところがたくさんあってアルバイトで稼いだお金は家の修繕にほとんど消えていった。お米づくりや畑は獣害にあってほぼ全滅。車はタダでもらったが車検代を払ったら残高が底をついた。当然僕たちは行き詰まり、パンクした。僕はアルバイト先のお風呂でひとり倒れ、気がついたら天井を見ていた。妻は毎日のように泣いていてある日「あなたには恨みしかない」と言われた。

これはほんの6年前の話。

たった6年の間に、無能だった僕は様々なスキルや知恵を習得して今は適度にオフグリッドな生活を楽しんでいる。妻も一応まだ付いてきてくれている、というかちょっと楽しんでいる。6年分の知識なんてたかが知れてるのだけど、今その知識を元にyoutube動画を上げると多くの人が観てくれ、参考にしてくれている(2021年現在3万人のチャンネル登録数がある)。電気、熱、下水の範囲にまだ限られるけれど家一軒まるまるオフグリッドで暮らすための知識は十分身についたと思う。そしてオフグリッドで家庭崩壊しない秘訣も…。笑

まだまだ知識が浅いのは重々承知だけれど、世の中にオフグリッド技術に関する本が少なすぎるのでこのあたりで一冊の本にまとめよう、と思い筆を執ることにした。出版社からの依頼があったのがこの本を書くきっかけではあったのだけれどそれは丁重にお断りし、既存の出版網には頼らないオフグリッドな自費出版で頑張ろうと思う。

この本は6年前の無知で無能だった僕に送りたい本であり、6年前の僕と同じような境遇の誰かにも届くといいなと思って書く本です。自分がいなくなったあとの世界が少しでもよくなるようにと願っています。