家も仕事も繋がりも補助金も得られる最高の移住初手「地域おこし協力隊」 出版#5

地域おこし協力隊制度について

ここまでオフグリッド生活のための地域選び、家選びについて書いてきた。とはいえ、条件云々よりも最終的にあなたの心が躍る場所に暮らすのがいちばんいい。悪条件な場所を選んで、必要な薪・ソーラーパネル・労力がもし増えたとしてもそこは体力と資金力でカバーすればいい。心躍る土地に暮らす最終的なゴールはあなた自身の幸福であって、オフグリッドはそのための手段にすぎない。「この場所に住めるだけでも幸せだ」と心から言える土地が見つかればそこに暮らすのが一番いい。

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さて、そういう土地を求めてこれから拠点を探すあなたに「地域おこし協力隊」という制度を知っておいてもらいたい。名前だけは聞いたことがあるという人は多いと思うけれど詳しく知るほどに「なんていう奇跡の制度なんだ!」と驚嘆するだろう。

いきなり年収400万円

地域おこし協力隊に応募するには都市圏に現住所がある、という条件がある。この「都市圏」の定義は結構難しいので自分の地域が対象になっているかどうか、各自でチェックしてみて。

地域おこし協力隊員の地域要件について

まずこの制度のすごいところは隊員一人当たり「年収200万円/活動費200万円」の400万円が予算として確保されているという点。この活動費については各自治体によって使える自由度がかなり違うのだけど共通しているのは活動費から家賃、車代(リース、車検、ガソリン代)を支払いできるということ。そして全国様々な土地に赴いて見学や研修などを受けるのもこの活動費から使うことができたり、何かしらの新規事業を立ち上げる場合の事業経費としても使うことができる。MAX200万円を使うことができたらこれはもう実質年収400万円だよね。しかもこれが3年間使えるので200万円x3で600万円分が予算として確保されている。

※活動費の自由度については各自治体で大きく違う。全く使わせてもらえない地域も。事前にチェックしよう。

○地域おこし協力隊員の活動に要する経費
・報償費等 ・住居、活動用車両の借上費
・活動旅費等移動に要する経費 ・作業道具
・消耗品等に要する経費
・関係者間の調整・意見交換会等に要する事務的な経費
・隊員の研修受講に要する経費
・定住に向けて必要となる研修
・定住に向けて必要となる環境整備に要する経費
・外部アドバイザーの招へいに要する経費

出典:総務省 地域おこし協力隊推進要綱

事業の準備中にも時給が発生

この「地域おこし協力隊」任期中に事業を立ち上げる人も多い。一番多いのはゲストハウスやカフェ開業など。自治体としても地域に魅力的なゲストハウスやカフェがあるのは嬉しいことだし「地域おこし」の枠組みにぴたりと当てはまる。この、ぴたりとあてはまる範囲の開業なら協力隊の活動としてやってもいいということになる。

あまり知られていないけれど協力隊は公務員と一緒で一定の「勤務時間(8:30〜17:00)」がある。1日7時間半の労働で月20日勤務、それで月収が16万6000円ほどだから時給に換算すると1106円/時。田舎ではかなりいい時給なんじゃないだろうか。しかも活動内容=事業立ち上げという関係性ができた場合、あなたの事業を立ち上げる時間にまで時給がつく、となるとこんなに素晴らしい話はない。(※もちろん業務はそれだけではない。事務的なこと、公務員的なことを頼まれることもある)


セルフビルドカフェ建築中の小野さん(下北山村の地域おこし協力隊)

最終年度に100万円の開業補助金

さて、活動費200万円が3年間もらえるだけでもものすごいことなのに、さらに最終年度(あるいは退任後1年以内)に開業のための100万円の予算が確保されている。3年間頑張ったご褒美…というにはかなり巨額のご褒美である。

オフグリッドで開業した協力隊の事例

このふんだんな予算を使えばオフグリッドに必要なソーラーパネルなどのほか、憧れの高性能薪ボイラー、真空管太陽熱温水器にも手が届く。国の金を使ってオフグリッドを実現するのである。開業後はちゃんと納税しようね。

この制度を使ってオフグリッド◯◯を開業した猛者たちを紹介する。そうそう、活動費を使うには「事業」という形に収めなければならないのでカフェやゲストハウスの形態をとることになる。「自宅兼」にしてしまえば自身もオフグリッドライフを楽しめる。

アースシップ美馬

これは徳島県美馬市の元地域おこし協力隊、倉科さんが立ち上げたアースシップのゲストハウス。アースシップでは、地下の気温を取り込むことで冬でも夏でも常に快適な温度を保つ工夫がなされている。高断熱の分厚い壁は廃タイヤやビン・カンなどの廃棄物を利用していて建築過程で新たな資源をできるだけ使わない。ソーラー自家発電、太陽熱温水器を設置してエネルギーも自給している「完全オフグリッド」な家だ。

提唱者であるマイケルレイノルズ氏を呼んで講演会を主宰することからこの建設プロジェクトが始まり、建築WSなどを経て協力隊退任後に開業まで漕ぎ着けた。建築WSは参加費ひとり約20万円、1ヶ月間という期間で募集したのだけれど日本中、世界中から参加者が集まったそう。

協力隊の予算ももちろん使えたとは思うけれど、事業は全体で数千万の巨大プロジェクトだと聞いた。全体からしたら協力隊予算はほんの一部だったかもしれないけれど、それがなければ最初の一歩が踏み出せなかったかもしれない。「オフグリッド」分野に限らず協力隊になって壮大な夢を実現している人が全国にたくさんいる。ちなみにこのアースシップはゲストハウスになっているので気になる人はぜひ遊びに行ってみて。

Earthship MIMA

下北山セルフビルドカフェ「マキビトcafe」

こちらは奈良県下北山村の協力隊夫婦が実現したセルフビルドカフェ。

1人以上、立っている人、アウターウェア、アウトドア、木の画像のようです

2人、立っている人、ヘッドスカーフ、アウターウェアの画像のようです

素人ながら、基礎工事から刻み、棟上げ 、電気配線工事まで全てセルフビルドのカフェ。薪ストーブやかまど、石窯を導入して熱エネルギーを自給、そしてバイオジオフィルターで下水を植物の栄養に変換して処理。米作りや野菜作りなどにも精力的に取組み、そういった素材もカフェに使用している。

火、ピザの画像のようです

手作り石窯で焼く、天然酵母生地のピザ。
オーダーを受けてから生地を伸ばして、一枚ずつ焼きます。

フリッターの画像のようです

11月のある日の健康ランチ。
地元のお野菜たっぷりです。

画像;オノ暮らし

計画当初は電気もオフグリッドするという予定だったのだけど今のところ無理せず電気は契約しているそう。これから自宅をオフグリッド化する計画だそう。

小野夫妻の場合、2人とも地域おこし協力隊として活動していた。当然活動費も2人分もらえる。夫婦で協力隊就任、アリです。

オノ暮らし

豊島のお宿「とのわ」

香川県瀬戸内の島、豊島にてオフグリッドで運営しているお宿があります。

Megumi Inako、笑顔の画像のようです

オーガニックカフェ併設、お料理上手な稲子さんも元地域おこし協力隊。任期中にオフグリッドな宿「とのわ」を完成させた。とのわは電力オフグリッド(全部ではなく一部)はもちろん、なんとオンドルがある。韓国の職人や瀬戸内の職人たちとWS形式で施工したそう。

写真の説明はありません。

それから、薪で焚く五右衛門風呂があったり、暖房はもちろん薪ストーブなど、できるだけ環境負荷を少なくすることに注力したお宿。

写真の説明はありません。

稲子さんは協力隊1〜2年目は島の観光協会での勤務を経て、3年目に自由を得て自身の宿の立ち上げに活動をシフトした。おそらくどの地域の協力隊も、初年度から自由を与えられることはない。我慢と静観の時期が必要ということだ。

豊島はアートの島としても面白い島なのでぜひ遊びに行ってみて「とのわ」の生活を体験してみては。

Teshima Eco House & Organic Cafe Tonowa ~とのわ~

熊野ゲストハウスikkyu

最後に紹介するのが、僭越ながら僕が立ち上げたゲストハウスikkyu。いっきゅー、という名は「地球一個分の暮らし」から名付けた。

「地球1個分の暮らし」オフグリッドを体験できるゲストハウス in熊野 | わわわワーケーション 働き方デザイン by JMAM

水害にあった古民家を借りてフルリノベ。電気のオフグリッドは鹿児島のテンダーさんを招いてWS形式で。

テンダーの世界を壊さない暮らし方のススメ① | ecoばか実験室

僕は協力隊2年目の活動費(200万円)を全てこのゲストハウスの改築費にあてた。これだけではお金が足りなかったのでクラウドファンディングで100万円、さらに銀行から200万円を借りてなんとか開業まで漕ぎ着けた。しかしお金がかかったのは建物の改築費で、オフグリッドソーラーシステムそのものに要したのはほんの30万円ほどだった。このシステムで照明、モデム、冷蔵庫2台、洗濯機を動かしている。

電気のオフグリッドのほか、薪ボイラー、かまど、コンポストトイレ(全て自作)を導入して完全に電気ガスの契約を切った状態で運営開始。しかしあまりに夏の暑さがきついので運営3年目にエアコンを導入し、エアコン用コンセントのみ関西電力と契約した。夏の暑さ以外は特に問題はなく、一等貸しゲストハウスとして50%以上の回転率で営業していた。

僕の地域(和歌山県新宮市)の場合は「起業すること」が協力隊のミッションだったので割と最初から自由に活動させてもらえたし、活動費も200万円まるまる使えた。ここはかなり地域差があるようで、新宮市はどちらかというと稀なケースかもしれない。

このゲストハウスは経営を引継ぎ、現在もオフグリッドな宿として営業している。

http://ikkyu.work/

まとめと補足

オフグリッドはなんだかんだ初期投資が必要で、どんなにケチってDIY施工したとしても100万円以上はかかってくる。これを自力で捻出できそうにない人は「地域おこし協力隊」としてオフグリッド実現しちゃいなよ、という「協力隊のススメ」論だったわけだけど、オフグリッド云々に限らず移住の初手としてとても素晴らしい制度である。

まず協力隊は行政と密に関わることになる。行政には空き物件や事業の廃業などさまざまな情報がいちはやく集まる。情報を得られるのは武器だ。また、地域の主要人物は行政と密接につながっているので、自ずと人脈のカードがそろっていく。その地域で何かを仕掛けるための土台がものすごいスピードで整う。そこに、活動費と起業補助金が加わるわけで人脈、情報、お金の3拍子が揃う。これほど充実した移住支援制度はなかなかない。

事例をいくつか紹介したようにオフグリッドとも相性がいい。持続可能なライフスタイルには大きな初期投資を要する。そこに困っているなら、協力隊制度は利用しない手はない。