コンポストトイレを強制的に発酵させる実験に成功しました

コンポストトイレを販売し始めてもう3年が経ちます。数え切れないほど多くの方にご注文いただき、ご縁を紡いでくれました。僕のトイレはユーザーの「コミュニティ」を用意しています。といってもただのFBグループなんですが。そのコミュニティ内で色んな疑問点を投稿してはコメント欄で知恵を持ち寄ったりしてみんなで「より良い方法」を模索しています。

そんな中で、今まで一番多く疑問をお寄せいただいていたのが「冬場の温度管理」。微生物は4度以下で活動が停止すると言われていて冬場はほぼ発酵しないのが大きな課題でした。そんな課題を解決しようと色々と実験してみましたがどれもうまくいきませんでした。

電気コイルでの実験

↑この動画ではこの電熱コイルを使用しています。コップやお風呂に突っ込んで水を沸騰させるというアイテムです。かなり、高温になります。

これをコンポストに突っ込んでみたのですが、温度をあげるのには一応成功しています。しかし、これでおそらく多くの微生物が死滅したのでしょう、翌日嗅いだことのない悪臭を放っていました。人間が触っても火傷を負うほどの高温の棒は入れてはいけなかったんですねぇ。当たり前か。

そんなこんなでコンポストトイレの温度管理は長年の課題として解決されないままでした。が、ようやく答えを見つけたのです!

電気毛布を使ってみた

ここ北陸に引っ越してから手放せない電気毛布。これ、ほんとあったかいんですよね。このうえに寝袋を巻くと熱が逃げずにさらに暖かくなります。断熱ってとても大事なんですね。これをコンポストトイレにも試したらどうだろう、ということで実験をしてみました。電気毛布を折りたたんでコンポストの外側にぐるりと一周。そのうえから断熱ぷちぷちをぐるりと一周。

この状態で通電してしばらく温度の変化を見てみました。

結論から言うとこの実験は大成功。24時間後にはコンポスト中身の温度が40度前後まで上昇しました(室温4度の真冬。開始時のコンポスト内部は13度でした)。

この冬3ヶ月分のうんちの水分がもうもうと立ち込め、木製トイレの内側は結露でびっしょびしょになりました。

2日目だけは匂いが発生しました。今まで寒さで匂ってなかっただけだったんですね。暖かくなったことで一気に解き放たれましたが、その匂いというのもウンチの匂いというよりも、少しツンとした土の匂い、森の中にいるような香りでした。

通電開始後から5日目くらいにはコンポストの土がサラッサラになり良質な堆肥のような感じで思わず手を突っ込んでみましたがまだ「ナマ」のウンチを触ってしまいギャー!と急いで手洗い場に駆け込みました。でも確かに土の感触は温かく、微生物たちが歓喜しているのが伝わりました。

糖蜜と微生物資材を投入

1週間ほどが経ち、だいたい43度くらいが電気毛布の限界っぽいなという結論にいたりましたので次なる一手に出ました。

コンポスト内部の微生物をさらに歓喜させるために究極の「エサ」である糖蜜を投入したのです。いやー、ウンチばかり食べるのもきっと飽きるだろうしきっと甘いもの欲してるよね。これで微生物くんたちがさらに頑張ってくれたらと願い50グラムほど糖蜜を垂らしました。

糖蜜 1リットル

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また、もともとコンポスト内部にはホームセンターの腐葉土を入れているのですが、そこにいる微生物の力だけでこれまでは頑張ってもらってました。そこに強力な助っ人を投入。生ゴミ分解発酵微生物「PaQooo」です。

こちらの微生物資材はトイレ仲間のヒミエルストーブさんに教えてもらったのですが分解発酵が早いというのはもちろん、「トイレの消臭にも!」という説明文がありまして、それで興味を持って購入してみました。

https://gskin.jp/a03.html

さて、実験の結果はというと、投入から24時間後48度まで温度上昇しました。前日より5度ほど上昇しているので効果「アリ」と言えそうです。しかし正直期待していたほどでもなかったかな、という印象です。もっと劇的に温度変化があるのかなと思っていました。

大腸菌死滅の65度を目指して

さて、電気毛布と微生物資材・糖蜜の効果で真冬でも50度くらいまでは温度を上げられそうな手応えを感じることができました。夏場なら60度くらいいくのでしょうか。また夏にも実験してみたいと思います。

ところでウンチを発酵させて堆肥として畑に撒きたいという場合、「大腸菌」「寄生虫」の問題が発生します。wikipediaの「日本における人糞利用」という項には以下のような記述があります。

第二次大戦後ダグラス・マッカーサー率いるGHQは日本のサラダに人糞の細菌と寄生虫が多数混入していたため、日本政府に人糞肥料の中止を命じた。日本政府は「寄生虫予防会」を各市町村に作り、人糞肥料から化学肥料へと一大転換が行われた。しかし、1955年頃になっても学校の保健室には「よい子はなま野菜を食べないようにしましょう」といった表題のポスターが貼ってある状況だった。ただちに人糞肥料から化学肥料の使用へと完全移行した生産者は多くなかったのである。

引用ーwikipedia

大腸菌や寄生虫が死滅していない状態のままの堆肥を畑に撒くとそれが野菜に付着してしまうようで最悪の場合人体への影響もあり得ます。良い子は生野菜食べちゃダメな時代があったんですね。大腸菌の死滅温度は65度とされていて、寄生虫などのことも考えると70度くらいまで温度を上げれたら問題なく堆肥として使えそうです。

堆肥界のスペシャリスト・橋本力男さんの「コンポスト学校」では参加者が実際に堆肥をつくるのですが発酵熱が70度を超えないと卒業させてもらえないないそうです。やはり70度というのはひとつの指標のようです。

また、「その辺のもので生きる」テンダーさんのブログに興味深いことが書かれています。

ただ、橋本さんによれば、発酵して一時的にちょいとばかし熱が上がったところで良質な堆肥にはならないそうな。
なぜなら微生物活動によって60度を1ヶ月以上維持することでのみ、良質な堆肥ができるから。
60度を1ヶ月維持しないと雑草類の種子および病原菌・寄生虫が死なない。
じゃあ電気的に加温して60度にしたらどうなんだ、と言われれば、微生物活動が1ヶ月以上持続してできた微生物の死骸やら何やらの塊が堆肥になる(微生物が窒素やら何やらを分解する必要がある)ので、加温だけしても堆肥にはならないそうな。
そして、ここが肝心なところで、堆肥づくりの上手な人でも、夏場で最低100L 1000Lは材料を積まないと堆肥は作れない、とのこと。要は体積が小さいと熱源として小さいので、熱がすぐに散ってしまう。

引用ーその辺のもので生きる/テンダー

うーん、つまりコンポストトイレで良質な肥料を作るのはとても難しいみたいです。ちょっと絶望してしまいますね。とはいえ、糞土師・伊沢正名さんの「ウンコロジー入門」の写真付き解説によれば自然界でウンコは確実に分解され姿を消し次なる生命の養分となっているので、たとえ未発酵な部分があったとしても畑の野菜を育むのに役立つでしょう。(未熟堆肥は根が直接触れると強すぎて根腐れを起こすことがあるそうで注意が必要です)

電気代は1日20円

そういうわけで電気毛布による加温には成功しました。これで眠っていた微生物たちの目が覚め、冬でもどんどんウンチを分解してくれるでしょう。今回僕が使用した電気毛布は消費電力50Wくらいでした。一日あたりの電気料金は20円前後という計算です。

月額でいうと600円。これであの重労働、中身の交換作業が軽減されると思えば安いものかもしれません。「電気も水も使わない」と謳ってきた僕のトイレですが「電気を使うとさらに快適」ということでこの方法はぜひオススメしたいと思います。僕のコンポストトイレでは「自然にカエル」という独立した発酵槽があったためこの方法が使えました。自然にカエル本来の用途「生ゴミ用コンポスト」として使用している方にもこの方法が使えるのでぜひ試してみてください。

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