暖房しながら給湯もできる薪ボイラー一覧。そしてオリジナル給湯ストーブ製作へ。これまでの反省とたどり着いた答え。

どうも、モーリーです。

突然ですがみなさん、僕たちの生活のエネルギーの4分の1が「給湯」に使われてるってご存知でしたか?

省エネライフ | 省エネライフ・エネルギーソリューション | 東北電力

また、暖房も含めると全体の7割のエネルギーとなります。

つまり暖房と給湯を薪で賄えたらエネルギー自給率7割を達成することができます。エコですね。

そのために薪ストーブと薪ボイラーを買いましょう、って普通はなるところですが、僕は思うのです。

薪ストーブと薪ボイラー両方焚くのすげーめんどくさくね?

そして別々で買うと超高くつきますよね。

これ、同じ薪を燃やすんだから一緒にできないかなぁと常々思っておりました。

 

そこで

給湯機能も兼ね備えた薪ストーブを作ったらめちゃ快適じゃん!

っていうことで3年前から取り組み始めたボイラーストーブプロジェクト。

ようやく形になった、というところまで来れたのでこれまでの経緯、失敗談や考察、行き着いた答えなどをお伝えしようと思います。

そもそも給湯ストーブって世の中にないの?

まず僕がどうしてこのプロジェクトを思いついたかというと、

給湯と暖房ができるストーブというものが現状、非常に高価である。欲しいデザインがない。

といったところがモチベーションとなっています。買うとだいたい60万円くらいかな。

しかも、おまけ程度の水量しかなかったり、

薪ストーブの醍醐味である「天板調理」を殺しているデザインだったりなどで

僕にはどうしても魅力的には映らなかった。だから自分で制作することにしたのです。

一応、以下に現状購入可能な給湯薪ストーブを挙げておきます。

オーロラアクア(夢ハウス)59万4000円

給湯説明1.jpg

薪ストーブ給湯システム

アクア加湿.jpg
画像;夢ハウス

こちらは夢ハウスさんの給湯薪ストーブAurora Aqua。64ℓの水タンクが燃焼室上部に備わっています。

また、タンクは取り外しが可能だそうです。とはいえ、手軽に「今日は外しちゃお♡」っていうノリでは外せないと思います。

天板調理は完全に諦めているデザイン。ここはちょっと残念なところです。

僕はこのAurora Aquaの実物を見たことがないんですが、タンクなしのAURORA Fire は見たことがあって、「オーロラ」の名の通りものすごく美しい燃焼を眺めることができました。ストーブ性能は最上級なのではないでしょうか。

 

参考 夢ハウス

マキキュート

makikyuto01

福井県の会社JASTYさんの「マキキュート」。エコキュートをもじってるので給湯器っぽい響きでわかりやすいネーミング。

決まった型などはないようで、

JASTYの薪ボイラーは全て受注生産のオーダーメイドとなっております。受注後納品までに約3ヶ月ほど必要です。

とのこと。なので、値段もオーダーによってまちまちみたいですね。

あなたのアイデアを具現化してくれるってことで、オリジナリティ出したい人はここにオーダーすると良いかも。

値段は50万円〜って感じですかね。面白い会社だなと思います!

参考 JASTYマキキュート

温水ごろん太

僕的には一番良いなと思っているのがこの温水ごろん太。

これの素晴らしいところは薪投入口がめちゃくちゃデカくて、なんと8時間も燃焼可能なところ。

燃焼室の両側面と背面が水タンク構造になっていて、熱をお湯に変換します。

いやー、値段さえ合えば僕はこのストーブ買いたかった。58万円。

あとサイズ感も、ちょっとデカすぎるという懸念もあります。(まあ、ビニールハウス用ですからね…)


↑これは通常の「ごろん太」で温水ゴロン太はこれより一回り大きい

ちょっと僕の予算と家のサイズ感には合いませんでしたけれども、これがぴったりフィットする人もいるのでは。

林業とかやってる人なら丸太を2mサイズのままぶち込むなんて魅力的ではないでしょうか?

参考 石村工業温水ごろん太

オリジナル給湯ストーブ製作の途中経過

上で見たように、給湯機能も備えた薪ストーブというものは存在しますし購入可能です。

ただ、僕の感覚からしたらちょっと高すぎたり、デカすぎたり、料理ができなかったりなどいまいちなものが多いです。

それで、僕は40万円程度で入手可能で、調理と暖房もできるような温水薪ストーブを作ることにしました。

あ、でも40万円は目標値でして、50万円程度になっちゃったらすみません…。

とはいえ最安を目指すことに変わりはないですっっっっ

ではこれまでの歩みを見ていただきましょう。

試作1号

とりあえず試作1号機は燃焼室の上にどーんとステンレスのドラム缶を乗せたものです。

燃焼室天板はポッカリ穴が開いていて、煙突はこのドラム缶タンク内部を貫通しています。

ドラム缶の底面を直火で熱する+煙突に逃げる熱をタンク内で回収、というダブルで水を温めています。

あとで詳しく書きますが煙突に逃げる熱を、煙突を水で抱くことで回収しようとすることは根本的に間違っている、とあとから気がつきました。それからもう一つ、結露の問題もありました。

タンク内部の水の温度と、燃焼室の温度差でドラム缶底面に結露が生まれます。

そしてその結露が直下にある薪にしたたり落ちます。これは燃焼を大きく邪魔します。タール発生の原因にもなります。

こういったことに気が付かずに試作2号機も同じような構造で制作してしまいました。                                          

とはいえ最安で作ろうと思ったらこのやり方がいちばんかも。タンク3万円、燃焼室9万円でした。

試作2号

さあ、ちょっと気合を入れて今度はバッチリ設計して、制作をお願いしましたよ!

製作費は35万円なり。

構造はこんなふうに燃焼室部分とタンク部分に分かれていてボルトで接合します。

200ℓタンクの中にはボールタップが備わっているのと、それから熱交換器も入っています。

これも、タンク内を煙突が貫通しているタイプです。もちろん、引きが悪い。

で、これは我が家ではうまくいったんです。我が家では。

煙突7mほど伸ばしたのでね!

最初はやっぱり引きが悪くて、燃焼に元気がなかったんです。薪の投入時にブワァッと煙が逆流したり。

しかしこれだけ煙突を縦に伸ばせばなんとかそれもクリアできました。

強風の時に煙突がグヮングヮンしなってましたけどねw

試作3号

いよいよこれを「わがやに導入したい」という方がいらしたのでその家のサイズや向きに合わせて設計した3号機。

実は、これで僕は厳しい現実と向き合うことになります。(※施主様や設計士様には本当に申し訳なかったです)

これを導入してくださったのはなんと新築高機密の家でした。

少しの煙でも室内にとどまってしまうので煙漏れは禁物。

僕の薪ストーブは古民家を旨として設計されていたのでした。

さらに、極寒の軽井沢においては煙突も温まるのにかなり時間がかかる。ただでさえ水槽で煙突が冷める。

結局…そのお宅では全く機能しませんでした。どんなに着火しても木が燃えない、という光景を僕は初めてみました。

人生で3本の指に入る「消えてしまいたい」と思った瞬間でした。

このストーブは自主回収し、今では友人宅で活用されています。

ここではうまく燃えてるみたいです。煙突出口にロケットストーブ構造を作ったことで引きを良くしています。

失敗から得た気づき

さて、これまで3機制作してみてわかったことがあります。これ、すごく重要なポイントです。

室内ボイラー設計上の重要ポイント

①タンクは燃焼室天面に設置してはならない

②水槽内に煙突を通してはならない

まず、燃焼室と水タンクが接する面には必ず温度差による結露が発生します。

これがね、結構な量の結露なんですよ。タンク水漏れしてるんじゃねぇか!?ってくらい。

タンクを天面に乗せるとこの結露が直接薪にしたたり落ちて薪の燃焼を弱めてしまいます。

そう、タンクの居場所としての答えは天面ではなく、燃焼室側面(背面)なのです

これはシンプルなことだけど実は大発見だと思ってる。笑

モーリー

AURORA AQUAのように鉄板一枚挟めば天面でもイケると思うけど熱の伝導率はかなり落ちそう。

また、煙突に逃げる熱を回収しようと煙突を水で抱き込むというのは煙突を急激に冷やし、「引き」を悪くすることになります。これは燃焼の妨げになります。

熱回収率を高めた結果、燃焼を弱めてしまったらプラマイどうなんでしょう。マイナスになることもあるんじゃないかなぁ。これでは意味ないですよね。

ボイラーとして目指したいのって、「早くお湯が沸く」ことじゃないですか。だから、燃焼を弱めるということは絶対に避けなければならないです。

大事なことなのでもう一度まとめておきます。

室内薪ボイラーでやってはいけないこと

煙突から熱を回収すると燃焼の妨げになる

薪の真上にタンクを置くと結露が燃焼の妨げになる

たどり着いた答え

というわけでたどり着いたのはシンプルな設計、こんな感じです。

そう、僕が注目したのは石油ボイラーのオイルタンク(ステンレス製)!!

こいつと燃焼室を抱き合わせる。それだけ。というのがたどり着いた答えです。

このステンレスタンクがねー、ほんとにいい仕事をするんですわ。

安いし(ヤフオクで5000円程度)、ステンレスで錆びないし、大きさもちょうどいい(容量90ℓ)。

さらにこれを側面に埋め込むことによって防火用の炉壁が不要になるんですね。

そしてもちろん、結露は真下のロストルへ落ちるので燃焼を邪魔しないっていうのが素晴らしいよね。いや、燃焼室温度を下げるので多少邪魔はするけど薪を濡らすほどの邪魔はしないというか。

さて、このアイデアを能登半島のストーブ屋さん「金森ストーブ」さんに持ち込み、ブラッシュアップしていただいた設計図がこちら。元図と全然違う!笑

いや、さすがプロの設計!!製品っぽい!

これ、構造分かりますかね。

このオイルタンクの半分が燃焼室内部に埋め込まれているんですよ。

タンクを燃焼室内に埋め込むことで直火に触れるのでかなり熱回収できます。

燃焼室に二次燃焼はあるの?気になりますよね。

ないんです。燃焼室はただの“ハコ”で、二次燃焼とかは何もないです。

その代わり、断熱二重煙突とダウンドラフト用の筒を合わせたロケットストーブ構造をとっています。

ロケットストーブ構造を取ることで長〜い横引きにも対応できちゃいます。

実際に我が家も5mの横引きですがちゃんと燃焼しています。

完成して我が家にインストールしてみた動画がこちら。

薪ボイラー使用した感想

さて、我が家にこのストーブをインストールしたのが10月半ば。

焚き始めてやがて2ヶ月が経とうとしています。

このストーブを使用した感想は…

 

いろいろ 感動 いらすとや 167727-感動 いらすとや - Freepnggejpqnxv

良い!!とにかく素晴らしい!!

何がそんなによかったのか。ひとつずつ解説します。

デカい薪が入る。温かい!

ステンレスタンクがそもそも大きいのでストーブサイズもかなり大きいです。

奥行きが77センチほどあるので、この写真のような薪も楽々入ります。

そして、薪の投入量が多いとそれだけ火力も強い!!

我が家の土間空間(約12畳)+リビング(12畳)合計24畳の空間を温めることができています。※スカスカの古民家です

タンクの温まりが早い

これは上記の内容ともかぶりますが火力が強いので90ℓタンクがあっというまに沸騰します。

これ、ほんとに驚くほど早いんですよ。

床暖房で100m分お湯を循環させて冷水が還ってきているのにどんどん水温上がって沸騰しちゃうんで困ってるくらいです。

蓄熱性

90ℓの沸騰したお湯、これは90キロの蓄熱体ということでもあります。

ストーブの燃焼が終わったあともじわじわと熱を放出して部屋を温め続けてくれます。

翌朝、部屋がほんのり温かいのはこの蓄熱性のおかげだと思います。地味に嬉しいんだこれが。

床暖房(セントラルヒーティング)と相性抜群

我が家ではこの90ℓタンクをリビングの床暖房につないでみました。

100mのチューブを埋め込んだこの部屋ですね。

いや〜、床が温かいって感動モノですな!!

この部屋は薪ストーブ熱源(土間空間)から少し離れているのですが送風と床暖房でかなり温まります。

土間空間が24度のときこの部屋は21度くらいまでは温まりますね。21度っていうと少し寒いような気もしますが、床が温かいだけで体感としてはぽっかぽかです。室温21度のとき床温度27度くらいです。

お風呂の給湯

これですよ、これこれ。これが、このストーブの真髄だってばよ。

仕組みはこんな感じ。

タンク内部に熱交換器(12.7mmの銅管10m)を投入して、あとは太陽熱温水器タンクの水を循環させるだけ。

タンクにドボンと熱交換器を仕込んでいますが、これ、実はかなり重大なポイント。

薪ストーブの駆体に銅管を仕込めばもっと火力得られるのでは?という意見もあるかと思うのですが火力が高すぎて管内沸騰の恐れがあります。

水の中に熱交換器がある場合は管内沸騰はあり得ません。安心して薪を焚いていられます。

太陽熱温水器って冬に全然暖まらないんですが、このストーブのお湯タンクと接続することで45度くらいにはあたたまるようになりました。

とりあえず湯船の200ℓ分くらいはこの薪ストーブの排熱でエネルギーまかなえるようになりました。

シャワーの分までまかなうためには本当は60度くらいまで温度上昇させたいところですが、ちょっとそこは要研究ってことで。とはいえこの仕上がりには概ね満足。

これで空間暖房、床暖房、そしてお風呂の給湯ができる一石三鳥のストーブが出来上がりです。

まとめ

ということで、これが僕の薪ストーブ・ボイラー研究の最終形態です。

気がついたら6000文字くらい書いてました、ここまで読んでくださってお疲れ様でした。

とりあえず動画をまとめます

①薪ストーブ・ボイラー完成

②薪ストーブと床暖房を接続

③薪ストーブと太陽熱温水器を接続

それから、この実験も暖房しながら別のタンクを温めるというシステムです

これらの実験が誰かの役に立てばいいなと思います。

それではまた!