どうもモーリーです。
すっかり報告が遅くなってしまいましたが3月に行ってきました、バイオガス建設プロジェクトのご報告です。
作業工程なんかは動画でまとめてありますので、工程に関してはざっくりと解説するとして今回の記事のメインテーマは「会計報告」です。
Contents
バイオガストイレとは
そもそもバイオガストイレとは何か、ということをざっくりと解説。
バイオガストイレのイメージは江戸時代の肥溜めと一緒です。
ただちょっと違うのは、その地下タンクの構造が特殊でガスの逃げ道が1点しかないということ。
ガスが回収できる構造になっているんですね。(ガスが逃げないから臭くない!)
糞尿が発酵する時、可燃性のガスが発生します。
これをうまく回収して調理や照明などに利用できるようにしたものがバイオガストイレです。
発酵済みの処理水は肥溜め同様、肥料として使用することもできます。
つまり、肥料とガスが同時に取り出せるという夢のようなトイレなのです。
阿蘇のキャンプ場にバイオガストイレを設置
このバイオガストイレの利点は「水洗トイレが可能」という点にもあります。
僕が普段販売しているコンポストトイレは仕組み的に水洗化が難しく、不特定多数のお客さん用という用途には不向きでした。
最近キャンプ場やゲストハウスからの要望も多いし、水洗コンポストトイレを商品化したいな、バイオガストイレの実験したいな、と思っていたところ、阿蘇のキャンプ場様から声がかかりました。
バイオガストイレのことを説明し、
「実験台になっていただけますか!」「喜んで!」という感じで即決。
トイレ小屋の建設も含めて約100万円を要する大きなプロジェクトがスタートしました。
そのためのクラウドファンディングも立ち上げて41名の方にご支援いただき32万9103円が集まりました。
バイオガストイレ施工の工程
①穴を掘る
まずはタンクを埋設するための穴を掘ります。キャンジョさんが整地用にユンボを1ヶ月レンタルしてくれていたのでそれを使わせていただきました。
だいたいですけど、幅1.8m奥行き2.7m、高さ1.0mくらいの穴です。
②コンクリ壁を作る
掘った穴に浄化槽タンクを入れるのですが穴の補強のためにコンクリートを流し込みます。
実はこの作業は元々予定しておらず、前日くらいに現場で「やっぱコンクリ打ったほうがいいね」ということになって急遽準備しました。
建築チームとして現場に来てくれた高橋素晴さんに色々とアドバイスをいただいて助けられました…。
さて、コンクリを流し込む前に型枠を補強します。
ミキサーがなかったので手練りで人海戦術!結構な量でした。
コンクリ厚みは最低5センチと素晴さんのご指導がありました。
2日後、型枠を外します。
良い感じのコンクリ壁が出来上がりました。
全体像はこんな感じ。
コンクリ壁いい感じに仕上がってよかった〜。正直、この作業が一番大変でした。土が剥き出しだと崩れてくる可能性があったので、やっぱりコンクリ壁やってよかった!
③浄化槽を投入
さて、いよいよこの地下室にバイオガスのバッグを投入します。
こちらはPVC製の袋で結構頑丈な作りになっています。中国から「バイオガスキット」として販売されているものを直接輸入しました。
予め埋め込んでおいたパイプにこの袋を連結させます。
これで、ほぼシステムは完成です。文章にしてみると結構あっけないですね…。結構苦労したはずなんだけどな。
④自動施肥システム
このオレンジのタンクはバイオガスタンクで浄化された液体の上澄液、すなわち「処理水」が溜まる場所です。
この処理水は発酵が完了しているためそこまで臭わない、予定。しかも栄養豊富な魔法の水。
このタンクのオーバーフロー分が自動で畑の地下に流れ込むように配管設計します。
溝に砂利を敷いて、そこに染み出しパイプ(ネトロンパイプ)を置く。写真のようにU字に曲げました。
さらにその上からも砂利を敷く。ねトロンパイプの網目が詰まらないように、という措置のつもりです。
この上に畑を作れば勝手に処理水が根に供給されて作物がぐんぐん育つと言う算段。
キャンジョ さん、早速野菜作りを始めたみたいですよ。キャンプ客の肥やしで育った野菜。食べてみたいなぁ。
⑤トイレとの接続
トイレとの接続までやり終えるつもりが、実は時間不足&部品不足で終わりませんでした。
角度の決まったパーツを組み合わせて綺麗に接続することはかなり難易度高かったというか無理でした。
本当は「自在エルボ」という部品が必要だったみたいだけど現地で最終日に気づいたんですよね、私。
ということでキャンジョ さんに宿題ということで作業は引き継ぎました。
やはりかなり苦戦したようでしたが最終的にトイレ配管完了し、無事に流れたようです!
よかった!!
⑥その他の作業
この場所は水道を引いていないので雨水を溜めてトイレを流すという作戦をとることになり簡単な雨水システムを構築しました。
圧力スイッチ付き自給式ポンプ7000円くらいのものを使っています。
さて、これを実用化するためにはまず牛糞を入れなければなりません。いわゆるスターターってやつです。牛糞にはメタン菌がたくさん含まれているのでその菌をお借りする感じです。
それからガス配管は「どこで使用するか」が決まっておらず今回設置できませんでしたのでキャンジョ さん自身で配管してもらう予定です。途中で脱硫装置を噛ませるだけの配管になります。
かかった費用
さて、それではこの記事の本題です(笑)会計報告。
小屋の建築77万4955円
バイオガス関連6万7994円
バイオガスキット10万円
雨水利用システム4万5736円
合計98万8685円
という感じでした。これはあくまで僕が関与した部分のみの費用となります。
トイレ本体の値段やキャンジョ さんが追加で購入された部材などの費用は含まれておりません。
そういった追加の費用を考えると全体でざっくりと130万円程度でしょうか。
水道のない場所で、雨水を利用したバイオガストイレシステム(小屋建築込み)でざっと130万円程度、というのはこれから同じような場所でキャンプ場を開業される方のひとつの指標となるのではないでしょうか。
あとキャンジョ さんは追加でオフグリッドソーラー電力システムも導入しています。そう、ここは電気も引いていないキャンプ場なのです。そちらの費用はちょっと僕は把握してませんが追加で100万円くらいかかったのではないでしょうか。
やっぱり、電気も水もない場所っていうのはインフラ整備にお金がかかりますなぁ。キャンジョさんはそういったノウハウがかなり蓄積されていると思うのでこれからキャンプ場開業する人はコンサル依頼をしてみてもいいかもしれないですね。
個人的な感想
今回バイオガストイレ建築をやってみて思ったことを書きます。とはいえまだ運用を開始していないので中途半端な感想しか書けませんが。
①費用感
今回バイオガス部分には16万8000円くらいの費用がかかりました。人件費なし、材料費のみでこの値段です。ユンボで穴さえ掘れたらあとはシロウトDIYでも全然いけるのではなかろうかと思います(生コンは運んできてもらうのがベストです…)。一般的な浄化槽を設置しようと思ったら100万円くらいなのでそれに比べると安く仕上がるとは思います。
②今後の商品化について
実際にバイオガストイレを建設して思ったのは「思ったより大がかりだったな」ということで、動画や写真に現れないところでかなり多くのボランティアさんが働いてくれました。これは本当にキャンジョ さんの築いてきた人間関係がすごいなぁと。そういう奇跡の巡り合わせがいくつも重なって工期中にある程度のところまでは終わったけどコレ普通のキャンプ場で少人数でやろうと思ったら結構大変だなぁと思います。またこれを今後パッケージ化しようと思った時にいろんなファクターに左右されてしまいやすいなと感じました。たとえば地質、建物との距離、ユンボが入れられるか、その土地の標高や気温、…などなどいろんな要素で工法も変わるし工期もかなり変動する。「どんな土地でも対応できて、3日間の工期でインストールできる」というところまで詰めてこそパッケージ化だと思うのだけれどこのバイオガストイレはそこまで仕上げるのが(僕の経験値的に)難しいものだと感じました。僕は不確定要素が多いままお仕事を受けることは出来ないので今後もしこういう依頼があったら「アドバイス」程度に留めて実際の施工までは受け付けないだろうなと思います。アイデアを昇華させてうまくパッケージ化できれば依頼を受けることもあるだろうけれど、今のところそこまでまとめられそうにもないな、自分の実力がそこまで届いていないな、という課題感を抱いたというのが今回の正直な感想でした。いずれはパッケージ化まで到達したいなとは思いつつ、機が熟すのを待ちたいと思います。
③排水配管って難しいんだなぁ
そもそも僕はシロウトです。浄化槽を設置するなんていう作業は人生で初めてでした。普通、プロならば厳密な測量をして適切な位置に適切な深さの穴を掘って浄化槽を埋めるのだと思います。僕はその辺の認識がものすごく甘かった。浄化槽とトイレをつなぐのなんて簡単だと思ってましたが、、、最終日に顔が青ざめました。ひゃああ、全然繋がらない。ちゃんと予習をしていれば「自在エルボ」という常識的に使われているアイテムの存在を知ることが出来たのだろうけれど。水道配管と同じでしょくらいに思っていたら全然難易度高かったです。猛省。やはり今回強く思ったのはシロウトが他人様の土地の大事な部分を扱ってはいけないなということです。今回は最初から「ボランティアで行きます」と言って人件費はいただいていないけれど、だからと言って大きな失敗をやらかしてしまった場合は責任0ではないのでこういう責任重大なお仕事は今後は自粛しようと硬く心に決めました。自分はシロウトなのだと改めて強く認識する機会となりました。
④今後への期待
今回はシステム構築のみ完了したのですが今後キャンジョさんのキャンプ場が稼働し始めたらモリモリに膨らみ始めるでしょう。
ガスがどのくらい取り出せるのか、匂いは問題ないのか、どんなトラブルが起きるのか…色々興味がありますね。その後の運用状況はキャンジョ さんの報告を待ちつつ、僕も地元熊本に帰る際には実際に見に行こうと思います。
続報を待たれよ。LINEグループの方々には逐一報告しますね。
まあ、そんな感じです。
ひとまず第一回目の報告はここまでとします。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。バイオガストイレが思ったよりも大変だったことが伝わったでしょうか。約5日間僕は現地に滞在しましたが文化祭前のあの感じを久しぶりに味わいました。怒涛の日々でしたが純粋に楽しかったです。色々と新たな知見も蓄積されてパワーアップした気がします。キャンジョ さんこのような機会をいただきありがとうございます。そして、活動を支援くださったクラウドファンディング支援者の皆様に感謝申し上げます。