20代でお遍路に行ってよかったと思うこと

ぼくは22歳の時、大学を休学して四国お遍路参りをしました。88カ所のお寺、全行程1400kmを約50日かけて歩いて巡る旅。見知らぬ汗臭いわかものに多くの人が手を差し伸べてくれて、それはもう恩の貯金通帳が溜まりに溜まりまくった旅でした。僕はあの歳でお遍路に行けたことがすごくよかったと感じています。今日はそのことを少し書いてみようと思います。

お遍路ってそもそも何?

お遍路とは、弘法大師(空海)の 足跡をたどり、八十八ヶ所の霊場を巡拝すること。札所の番号順にまわっても その反対でも構いません。お遍路の目的は、健康祈願、自分探しや開運・縁結びなどそれぞれです。巡礼者が持つ笠には、「同行二人」という文字が書かれており、ひとりは自分、そしてもう一人は弘法大師を意味します。つまり、弘法大師様と二人で巡礼の道を歩く、それがお遍路なのです。

巡るめく四国[お遍路の基礎知識]から引用)

僕の場合は「自分探し」。こんな格好をして50日間歩き続けました。どんなガイド本も教えてはくれませんでしたが、お遍路の大部分は過酷な山登りです。このぺらぺらの靴は早い段階で潰れ、地元の薬局で替えの靴をいただくことに成功し、旅を続行しました。

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お遍路に行った経緯

22歳のときにお遍路に行きましたが、21歳の一年間は東日本大震災のボランティア活動をするために仙台市に暮らしていました。そこで見た風景、感じたことがあまりにも僕の価値観を揺さぶるのでこれは一度頭を整理したいなと。それまで確固たる軸に沿って生きてきたつもりだったのですが、その軸がスポッとなくなっちゃったような感覚でした。最後には虚無感に襲われて声が半分くらいしか出ないような、精神的に危うい状況でした。そんなときにお遍路を薦めてくれた先輩がいて、彼も22歳でお遍路を歩いたとのことだったので「これはもう22歳のうちに行くしかない」と思い、旅に出ました。SONY DSC

人生初の「何もしなくていい50日間」

お遍路を歩いてみて思ったのですが、何もしなくていい期間って人生でこれまでなかったように思います。いつも「何かしなくちゃ」と焦って、何もしていないと虚無感に襲われる。競争社会の刷り込みって怖い。お遍路は何もしなくていい。ただ歩けばいい。ひたすら歩いて人生について考える。そういえば自分の人生とちゃんと向き合ったのもこのときが初めてだったとあとから気づきました。

何を考えて歩こうかなと、ホントになんとなく始めたお遍路でしたが泊めてくれたお寺のお坊さんから「過去を振り返りなさい」「そうすることであなたの本我(ほんが)に出会えます」と言われてからはひたすら、過去の出来事とその当時の僕の感情なんかを思い出す作業をして歩きました。結果として僕はその本我に出会えたのかどうかはわかりませんが、なんとなく自分はこういう人間で、どこを目指しているのかというのがわかってきた気がします。最初に震災ボランティアで自分の「軸がなくなった」と書きましたが、その軸を取り戻した感覚がありました。SONY DSC

 

 

かかった費用や宿泊など

ぼくは7万円だけ持って歩きました。最初のお遍路グッズを購入するのに1万円ほどかかります(傘帽子、金剛杖、袈裟、札など)。それから、88カ所の札所にて一筆ずつ書いてもらうのですが(こんなやつ)、それが一回300円かかるので×88で結構な額になります。7万円ではかなり厳しかった…

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いよいよ残金もわずかとなってきて、道ばたに落ちているパンを拾って食べるかどうか本気で迷ってました。(なんで食パン落ちてるんだ…あまりにシュールだったので写真だけ撮りました)

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食事はスーパーで食パンを買ったりカップ麺を買ったり。お風呂は4、5日に一回くらい銭湯に入りました。せっかくの四国旅なのにうどんすら食べれず。たまには美味しいものを食べるために10万円くらいは持ってきた方がいいかも。それから泊まる場所はほとんど野宿。寝袋をかついで歩きました。中にはテントを持って歩く人もいました。テントいいなあ。次にまた歩く時はテント持って行きたいです。地元の人が泊めてくれるなんてのはほとんどないです。ぼくは一回だけ。ウォーキング中のおばちゃんがぼくのあまりのみずぼらしさに手を差し伸べてくれました(夜ご飯は手羽先の唐揚げをたらふくいただきました。そのあとふかふかの布団。あのときの幸せといったら!)。SONY DSC

 

お遍路さんを無料で泊めてくれる「善根宿」という場所も結構あります。それからお弁当を無料で配達してくれる弁当屋さんなんかもありました。そして、地元の方がお金をくれることもあります。僕はトータルで4000円くらいはもらったかな。ありがたいです。

お遍路はやっぱり若いうちがいい

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ぼくは大学を休学してお遍路を歩きましたが、休学を取ってでも行く価値あります。断言できます。僕はいま、お遍路で出た答えに沿って生きています。もしお遍路に行かず、その答えに出会っていなかったらまだまだ自分探しをしていたかもしれません。海外で自分探しをするのもいいですが、答えは必ず自分の中にあります。自分ととことん向き合う、そしてその時間を若いときに体験する。遠回りは人生のいいスパイスではありますが、遠回りばっかりで目的地にたどり着けない人生なんていうのは恐ろしい。若いうちに目的地を見つけておいたほうがいい。お遍路ではきっとそういったものが見えてくるはずです。

ちなみに僕が50日間あるいて出した答えはたったひとつ「自給自足に生きる」です。いま、食料とエネルギーの自給にむけて少しずつ動き出したところです。あのときの決断が、現在の妻と引き合わせてくれたし全てをいい方向に連れてきてくれているように思います。